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5つ星のうち 5.0 人と人とを繋げ、幸せを創造する人,
レビュー対象商品: 詩羽のいる街 (単行本)
普通では出会わないような人間同士を結びつけ、思いがけない化学反応を起こさせることで、双方に幸福をもたらすという、まるで触媒のような働きをする謎の女性・詩羽の日常を描く、
連作短篇集。
他者と共存したほうが、結果的に自分の利益につながる――。
生きていく上で、過去に原因を求めても無意味だ――。
上記のように、詩羽の根幹にあるのは楽観的なまでの論理への信奉です。
しかし彼女は、現実において人が論理のみで動く存在ではないことも重々承知しています。
それを踏まえた上で、つまらない意地やこだわりを捨て、論理に従ったほうが、
はるかに生きやすく楽しいことを相手に合わせたやり方で提示していくのです。
詩羽のような存在は、むろんファンタジーに過ぎませんが、 彼女が示すアイディアや工夫は
ちょっとした意識の変化や努力で、充分日常生活に活かしていけるようなものばかりです。
決して、無根拠な善意の押しつけではありません。
トルストイのエッセイARRTは何ですか
まあ、まっとうすぎる詩羽に少々気後れも覚えてしまうのですが、
そこは説教オヤジ・山本弘の持ち味ということでスルーできます(w
また、連作短篇らしい趣向も抜かりなく凝らされており、最後の短篇においては
一瞬メタ的にオトすのかと見せかけて実は……という心憎い演出がなされています。
(第三話での軽い叙述トリックとそれを小道具で暗示する手際も秀逸)
すべての人間関係が繋がり、美しく円環が閉じるように終わる結末は出来すぎのよう
にも感じますが、奇跡の人・詩羽が存在する本作では、これが「正解」なのでしょう。
▼付記
乙一さんはエマノンを連想したようですが、私は入江紀子さんの『のら� ��が頭に浮かびました。
まあ、同じ"家なし娘"でも、その信条は随分違いますが(w
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5つ星のうち 5.0 あなたも詩羽と出会って、人生、かなり楽しいものにしてみませんか?,
レビュー対象商品: 詩羽のいる街 (単行本)
「詩羽のいる街」は「著者初のノンSF」等と宣伝されているようですが、見かけはSFではなくても、紛れもなく「心はSF」な山本弘テイストに溢れた作品です。
(多少お説教くさいところも含めてね)
読了後には、「神は沈黙せず」や「アイの物語」と同じように、
あたたかい気持ちにさせてくれること請け合いです。
出会った人の人生を幸せにする女性「詩羽」。
それは小説の中での話だけど、確実に読者の心にもなにかを残してくれる
とても魅力ある女性です。
この本を読み、詩羽と出会ったことは、僕の人生における大きな蝶の羽ばたきで、
少なくとも自分の心のBGMを少しでも変えてみようという気になりました。
現実にはこんな女性はいるはずもないし、俺の嫁にはならなくてもいい� ��ら(笑)
自分の住む街にいてくれたらいいな・・・思わずにいられません。
・・・近い将来、TVドラマ化、もしくは映画化になるじゃないですかね、この作品は。
それくらい魅力ある作品、そしてヒロインです。
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5つ星のうち 3.0 合う人と合わない人がハッキリ分かれる本,
レビュー対象商品: 詩羽のいる街 (単行本)
合う人と合わない人、ハッキリ分かれる本だと思いました。詩羽の考え方にしっくりきた人はピッタリ合って共感する。
でもその考え方に疑問を持った人はその閉鎖性に嫌悪感すら感じる。
そういう本だと思います。
私は第一章は前者で、第二章からは後者でした。
作者のブログに自ら「最高傑作」と書かれていたので、期待しすぎたのかもしれません。
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この本のコンセプトは大好きです。
ただ、そのコンセプトを活かしているかというと・・・
第一章と、四章のラストは良かったですが、それ以外は退屈で、時々苦痛でした。
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この本は小説と言うよりエッセイに近く、作者の言いたいことを作中人物が代弁し続ける構成です。
メインの詩羽も、作られた像が決まったことを話している印象� ��あります。
その理想はいいのですが、特に死に対する見方などが一面的で浅く、その進め方も独善という印象が否めないため、人間的魅力には乏しく描かれてしまっています。
彼女に対抗できる人物などがいれば、人としての魅力が出たかもしれません。
でも彼女も作品自体も出来あがった価値観が強すぎて、そこから一歩も外へ出なかったのが残念です。
作中に描写されないだけで
「あの人、理想は良いんだけど物の見方が一面的で…」と、彼女を嫌う人も街には多いんだろうな、と思ってしまいました。
詰め込まれたギミックは面白いです。
でもそれが作品の本筋と溶け合わずツギハギな印象は否めません。
ギミックや人物描写など、これらを作中でも触れられていたように、
物語に昇華できれば、確かに傑作になることもできた本だったと思います。
可能性があっただけに、
やたら小さくまとまってしまっているのが残念でした。
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